2010年01月04日

バーディッシェ・ツァイトング

11月17日の南ドイツの新聞、
バーディッシェ・ツァイトングに
山本昌男展の記事が掲載されました。

http://www.badische-zeitung.de/nachrichten/kultur/ausstellungen/ein-fleck-in-grosser-hoehe

高みにある斑

このようなものは今までに見た事がなかった。ここ、アルバート・バウムガルテンギャラリーにおいてでさえも。それらは壁に付けられた額なしの写真であり、むきだしの状態で時にミニチュアのように小さく、まだら模様をつくる。縁は荒めに切られている。それらは展示されているという感じではなく風になびいてとどまったかのようだ。モチーフからみるとあちこちで撮られた写真である。写真家がここでそれらを一つにまとめ、視野を広げる。

この展覧会の中で唯一の色というのは青色で、その中に雲が浮かんでいる。“自然のなかの移り変わりを眺めるのが好き”という山本昌男氏。雲にむけて語りかけるのだという。この日本人は物事をこの雲のように見つめる。これは“流れる世界”に対する極東的な視点であろう。これはおそらく漠然とした中での想像力を必要とする。これは写真家として業、見せ、捕えるといった私たちが知っているものとは種類を異にする。川の一瞬の流れを停止像にすること、ここにはそれがない。

彼は、写真家としての姿勢としてあるパラドックスを例にして説明している。“積極的受動性”であるという。おそらくこれは、すべての偶然に起こった小さな物事へのある種の覚醒、冷静な注意力であろう。時に写真上に、ただただ小さななにかが写っている。例えば鳥だったり。この鳥はもしかしたらただの単なるしみのようなものかもしれない、あるいは上空を飛ぶ飛行機かもしれない。暗黙の中にわずかながら意味的な重量感がある。それは、投げられた小石が水面につくる輪、そして水面に写る森の暗いシルエットを写した別の大きめの写真のものと変わりがない。それらの重量感というのは我々にも正体がわからないものである。まるで伸びた手の中にあるが、しっかりと掴まれていない鳥の写真のように、写真家が彼のモチーフに固執してないような感覚である。

霧は雲である。
壁にアレンジされ貼られた写真はチョウの薄い標本箱にあるもののようだ。エネルギーあふれる紙々そして少々特別な様子は、この箱の空間にあるようなものだ。暗闇に自らを隠し、光に自身をあずける。小さいもののなかで視線が広がっていく。飛行機から山脈をながめる。雲のつながり、浜辺の波跡。下から急激に上に向かうもの。溶けゆくうっすらとした雲を写真家はとらえる。空間を越えて関連性はつづくようにみえる。どこにそれらがあるのか探すうちに像は消えゆく。

しかしながら物事がそこにあるようにという写真家の強さが再び現れる。偶然のごとく遠目にみえる端に冬の装いの2、3の枝があるのがみえる。驚くべき事に偶然にも、海の中に黒い波の線が引かれており、それと反対にして少し先には光ある白い波が引かれている。ときにそれらは過度に光るものであるが、感性を磨かれた写真家はこの光を計画的に付け加えた訳ではない。濃厚な闇もそうである。あるいはある稀にみるシーン - 裸の女性が暗闇に立ち、手に持っているものは光り輝く真珠のネックレス。あるいはやわらかに暗い富士山の肩にかかる月の輪郭になる。女性のヌードは好奇心を誘うためのオブジェに必ずしもなるというわけではない。ここではヌードということがほとんど分からないのである。そしてこの山は皆が知っているあの山ではない。そしてこの森は?神社の手前にあるくぐり門。明るい中の窪地が再び。これは魔法にかかった霧。あるいは雲といったらいいだろうか。

このような形でのみ、すべてのここにあるものはあり得なかったし、定着することはなかっただろう。まったくめずらしいことだ。とアルバート・バウムガルテン氏。これらの写真の目の前で、多くの人々がこの謎にはまり、頭を抱えている姿をみている。

Badische Zeitung 17.Nov.2009
山本昌男展 Gallery Baumgartenにて Volker Bauenmeister

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Posted by Eri Kawamura at 00:00 │Comments(0)Yamamoto Masao

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