この度、la-condition-japonaiseでは第3回展といたしまして、Jinran Kim、福田恵展を開催する運びとなりました。ここに展覧会の案内ならびにお知らせを申し上げます。特に展覧会のタイトルを設けませんでしたが、ここでは“あるものが持つ時間や記憶、そしてその思いの形象”がテーマになっています。とりあげられたあるものとは一方は寝具であり、もう一方は古本となります。
そこには今回展示のアーティストが感銘をうけた、しみついた記憶があり、また折り込まれた記憶があります。

Jinran Kim, Megumi Fukuda
Paintings, sculptures
8.8.- 30.8.2008
Opening 8.8.08, 7 p.m
Brunnenstraße 29, 10119, Berlin
Tu-Fr 13.oo-19.oo Sa 11.oo-18.oo
Tel: 030 25581180
la-condition-japonaise.com
e@la-condition-japonaise.com
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Jinran Kimは韓国・ソウル生まれ、 1994年から1997年までベルリン芸術大学UDKにて勉強、1994以来ベルリンとソウルを行き来し活動する作家です。本来、彼女は石鹸を用いる作家として知られています。石鹸でアンティーク家具を制作し、格式あり、歴史をみてきたというような重厚な家具と軽やかで一時的、空気を伝うという香りを組み合わせる作品です。鎮座する古いものが見てきただろう記憶と新たに付け加えられた香りによる記憶の作品ということができるかと思います。今回、展覧会に出品される作品も記憶に関してであります。これは格式ある寺で生涯真摯に仏につかえ、仏教徒の最高地、解脱に到達した老僧のベットについてです。「The Last Mattress of an Old Monk.」とタイトルがつけられた作品は、彼が寝起きをして、時に安堵の心地についたり、時にその上で夢をみたマットレスであり、一日の厳しい修行を終え、彼の横たわった時の記録がしみついたマットレス、また最後の床ともなったこのマットレスでもあります。彼の動く体はもうこの世にないのですが、彼の鮮明な記憶がよみがえります。
もう一人今回の展示で紹介いたしますのは、福田恵。1976年日本・広島生まれ。現在ベルリンにて活動する作家です。人工のチューリップをベルリンの空き地に季節を問わず植え、その都市のすきまである土地を活性化するというパフォーマンスの作品にて知られている作家です。今回の展示においての作品は、「クリスタル」と名付けられた古本を使用した作品を発表いたします。何万年と時間をかけてつくられるクリスタルと同様に、後世までのこる書籍は人の知的労力を終結させ、想像をはるかにこえた時間をかけられて作られます。まさに知的結晶である本を通りでみかけた時、福田はそれをもちかえり、これ らで作品をつくることとしました。所有者がない古本は、彼女がつくった結晶の法則により様々の形に折り畳まれたものとなりました。未見の過去の所有者が抱いていた本に対する愛着もここに折り込まれています。クリスタル化したその本はその題名が今やまだわかりますが、内容は読めません。もしそのタイトルをみてその本が読んだ本であるならば、鑑賞者は自分のその本への感情も折り込めることになりかもしれません。もし読んでない本であるならば、結晶の形から内容に対する想像を膨らませることができるでしょう。
皆様のお越しをお待ちしております。
河村恵理
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