2007年04月22日

地球のぉ。

本日は日曜日。
一級品を見に。

美術館へではなく、
フィルハーモニーに向かった。

指揮者、小沢征爾さん!
すごかった。

世界の小沢じゃなくて、あれは、地球の小沢だね。

うぅ〜ん。うなるしかない。

テレビでは拝見していたけれども
実際に仕事場を見させてもらったのは始めて。

一番手頃な値段の席だったが、
フィルハーモニーの手頃な席というのは、
オーケストラのバックに位置するというものだ。

ということは、小沢さんと対面しているというものだ。
いい席をもらったぁ!

何回もいうようだけれど、
フィルハーモニーの設計はちょっと他のコンサート会場と
違っていて、オーケストラを囲む感じである。
ということは、指揮者がホールの真ん中に立つ。

そうなると、彼を中心にしてものすごい集中が集まる。
彼は曲を奏でさせるべく、オーケストラに対峙しているのであるけれど、
なんかねぇ。ちがうの。彼のためにオーケストラが演奏し、彼のために観客がいるような感じ。

なぜそれが成り立つかというと、彼は支配的でもなく、威圧的でもない。
ただただ、情熱をオーケストラに吹き込んでいるだけだ。

汗なんかもとびちるとびちる。
そういうのが、遠目からも見える。

燕尾服という最上級の正式な格好をしているのだけれど、
汗をふきふきやっているのである。クールにすましてなんかやっていない。

曲と曲との間には、白いハンカチを取り出し、汗をふきふき、
そして極めつけには、鼻をチーンとやっている。

ものすごい真剣なの。

あれは、一種のパフォーミングアートにも通じるところがある。

とにかく、オーケストラに熱気を入れる。
オーケストラもプロだから、いつもプロ級のものを常に出している事は
確かだろうけれど、なんかそれ以上のものが出されているような。。

すべてが一体感となって、熱いものが引き出されている。

それは、ベートーベンや、ブラームスに対する熱いものや、
クラシックミュージックというものに対する熱いものをも越えていた。

私は、クラシック音楽ファンではないし、
耳に関しては、素人なのでなんとも音楽に対しては、
コメントは控えたい所なのだけれども

もうねぇ。小沢さんが振った手の次の音がいつも聞きたくなるのだ。

指揮者の手をみていると、その手といくらか、微妙に
ほんとうにいくらか遅れて楽器が奏でられるのがわかる。

指揮者は、さすが、次の音を示唆しているだけあって、
彼の手の振りと耳に届く音とは一致しないのである。
(あってますでしょうか、専門家でないので自信がない)
まるで、音声が遅れている衛星中継みたいに。

それだから、今小沢が指図した音はなんなのか、すぐに知りたくなる。
もちろん、それは耳にとどくのだけれど、もうすでに目は次の指示を見てしまっている。
そして、すぐに次の彼の指示した音がなんなのか気になり出すのである。

とこれはほんの一瞬に起こる事。

この繰り返しなのである。

だから、過去の音はまったく頭に残っていない。
これがベートーベンの曲であろうが、ブラームスの曲であろうが、
名曲の余韻にひたりながら曲を鑑賞する事は許されない感じだ。
ただただ、小沢の次の音が気になるだけだ。

パワーを注がれ、オーケストラはその能力以上の力を発揮する、
それが指揮者にも返って来て、またそのさらなるパワーがオーケストラにも、客さんにも注がれる。
このホールを舞台に、彼を中心として2重、3重の立体的円弧が成り立つのだ。

特に、私なんかは、小沢さんと対峙するような席だったから、
一番後ろで指揮されていたようなものだ。

彼の熱気は伝わり、こちらは動かずとも自ずと熱くなってくるの。
あ、私の前に鎮座している青年が、パンフレットでぱたぱた扇ぎ出した。

彼も熱くなっているのね。

わかるわかるぅ。

こんな調子でコンサートが終わるから、
次の小沢さんの指揮曲も聞いてみたくなるのだ。
常に未来に楽しみが蒔かれている。

彼が音楽に情熱を入れるためならどんな体勢でもする。
人の目なんて気にしていない。(ずいぶんの数に凝視されているのですけれど。)

あるときは、道化のように滑稽に、
あるときは、一国を支配する者のように厳しく。しかし慈愛を持って。

彼が舞台上で大きくなったり小さくなったりする。
自由自在の変化である。

最近、一神教のことで頭がいっぱいになっていたから
なんだか、コンサートの様子は、
曼荼羅ではなく、一神教の典型図を見ているようだった。

彼が中心だった。

それにしても、西洋の指揮者と違う所は、
まったく、中心としてすましていないということ。
そういうのは、最後に明らか。

演奏が終わるとブラボーの声に拍手喝采が沸き起こった。
そうすると彼はつかつかと、オーケストラの中に割り入って
それぞれのパートの長と握手をかわす。

もうそれが、「よくやりましたね。ご苦労様」
という表現ではなく、
「ようやった!ようやった!よかったよかった!」
と肩を叩き合うという表現なのである。

手も足もはちきれんばかりに拍手があるなか。
数回のカーテンコールがあり、オーケストラも引き上げ、お客さんもあきらめよろしく
出口に向かいはじめたけれど、まだまだ、拍手はとまらない。

そのまったく止まらない賞賛の拍手に応じて小沢さんが
ようやく出て来た。最後の挨拶にである。

5月24、25、26日と小沢さんの指揮のコンサートがフィルハーモニーであるけれども
残念ながらすでにすべて売り切れ。そのコンサートの模様は5月25日ラジオにて放送される。

25.05.2007 20:05
Berliner Philharmoniker, Seiji Ozawa
89,6 MHz, Kabel 97,5 MHz
Deutschlandradio Kultur

地球の小沢でございました。

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Posted by Eri Kawamura at 00:00 │Comments(4)人間について。

この記事へのコメント

むう。まいった。小沢征爾にではなく、あなたに、だ。クラシック音痴の私が、わざわざフィルハーモニーまで昼寝するためだけに足を運ぶことはないけど、こう書かれると、触手が動きます。世界を通り越して、地球の、と言われると、降参だな。一級品というのは、クラシック狂というわけでもないB嬢をここまで動かし表現させるとこ見ると、ジャンル問わず共通した基盤のようなものがあるのかしら。世界の、といわれてもぴんとこないけど、地球の、とか、この星の、といわれると、ああ、俺が踏みしめているこの大地とつながったひとが音楽やってるんだ、そりゃ体にびんびんくるだろう、という気がしてきます。

バッハとかモーツァルトというひとたちも、世界史上の大芸術家というより、地球出身作曲家とか、この星から生まれた作曲家と呼んでみると、音楽がとたんに宇宙的なひろがりを虚空に響きわたっていくような錯覚にとらわれます。

もっかい言うけど、小沢にではなく、B嬢の捉え方に、感じ方に、参った。降参。シャッポ脱ぐ。むう。
Posted by junabi at 2007年04月28日 21:42
いやぁだぁ。そんなに参らないでよぉ。困りますよぉ。
チケットなんて誰でも買えるんだから。お金出せばぁ。
あんまり頭に残ってない、どんな音楽だったかぁ。私ねぇ。発音が悪いから、耳が他の人に比べて悪いと思う。その変わり、見れば分かる事も多いからだから聞きに行くべきなんだと思う。CDじゃねぇ。分からなくて満足しない女ですよ。その土地にいかないと。カネかかるよー。この女はぁ。

しかし、モーツアルトってすごいらしいね。まだよく分かんないけど。
Posted by bonobono at 2007年04月29日 17:29
小沢征爾さんは病気療養後、ついにウィーンに復帰!
なんだそうだ。ウィーンでは色々演奏会もあるみたいだよ。
ウィーンってまだ全然行った事ないけれど行ってみたいな。

ベルリンのフィルハーモニーは、時々行くのだけれど、
いつ行っても、おおーーーーとびんびんして帰ってきます。
日本いたらクラッシックは聞かなかったと思うんだけど
ライブで観ると全然違うのよねぇ。
レコードとかを買って聞こうとは思わないんだけど、ライブは見たいわけ。
私も、指揮者とご対面な席に良く座るけど
指揮者の指とかにあわせてつい頭が動く。犬みたいに。
指揮者と目が合う気がするけど気のせいか。
Posted by kio at 2007年05月01日 16:47
Kioちゃーん。

そうだったのですか。病気復帰後のタクトとは思えないぐらいの、
(あ、タクトは実際に持っていなかったのですが)振り加減でしたよ。
は、はげしかったぁ。

さすが、レコードを聞くよりライブを見たい。
ビジュアル系ですね。

目は、合わせられていると思いますよ。
Posted by bonobono at 2007年05月02日 07:18
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